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【特集】 世界の学びの窓から「<第3回>教育は社会を映す"時代の鏡"?イギリスの高等教育から分かること」(対象:高校生)

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特集「世界の学びの窓から」

この記事では「【特集】世界の学びの窓から」と題し、海外の子どもたちの学習事情について、5回にわたって連載していきます。第3回の今回は、「イギリスの高等教育」に注目して、そのシステムと文化背景についてのコラムをお届けします。


2021年1月から「大学入学共通テスト」が、現行の大学入試センター試験に代わって採用されます。これまでの一発本番のセンター試験利用方式から、長期視点での学習成果を重視する方式に変わり、記述式回答が増えるなど大きな変化があります。それに応じて、日本の教育機関や予備校でも、指導やカリキュラムを再考する動きが見られています。

このように「学び」のスタイルは、国の政策や社会的背景の変化によってかたちを変えていくため、教育制度からその国の文化や考え方を知ることができます。



「高校生」の区切りがないイギリス 大学進学前の2年間とは?

大学進学率の裏に何が? 意外な「教育格差」から見えるイギリス文化

まとめ




「高校生」の区切りがないイギリス 大学進学前の2年間とは?

イギリスでは13~16歳の間 Senior School (Secondary Education=中等教育)に通い、義務教育は16歳で終了します。16~18歳の間は大学進学前の期間、日本で言うところの高等教育の期間(高校生)にあたります。


16歳の Senior School の終わりにはGCSE (General Certificate of Secondary Education) と呼ばれる中等教育修了試験を受け、その後、約5割の生徒は2年制の Sixth Form(第6学年)と呼ばれる、大学進学のための教育課程に進みます。その他、約3割は継続教育カレッジに進み、職業訓練を受けると言われています。


Sixth Formは日本の高校にあたる課程で、その初年度にASレベル (Advanced Subsidiary Level) 、2年目にA2レベル (Advanced Level) と呼ばれる試験を受けます。この試験は、一般に"Aレベル"と呼ばれ、国際的に認められている資格試験です。この試験の結果に応じて大学への出願ができるようになります。


学生たちは大学での専攻希望科目を、このAレベル受験の段階で3~5つ選ばなければいけません。つまり、日本と比較して「高校生」にあたる早い段階から、自分の専攻学問を決めておく必要があるというわけです。


さらにもうひとつ、日本の高等教育と大きく違うことに、このSixth Formの2年間では生徒たちの「自主性」が重んじられているという点があります。


Sixth Formの期間は専攻科目に応じたカリキュラムが組まれるため、自分で選択した科目の授業のみを受ければよく、自習時間が多いのが特徴です。そのため、自由な時間が多いなかで生徒自身が各々試験に向けた学習習慣をつけていかなければいけません。


大学進学前の2年間から、ASレベル、A2レベルという目標に向かって自己管理能力を育てるカリキュラムになっているのです。


日本の「大学入学共通テスト」化は、大学進学にあたって複数回の試験の機会がある点長期視点で大学生に必要な学びの姿勢を重視する点においては、イギリスの教育制度に通じる考え方といえるかもしれません。



学習風景



大学進学率の裏に何が? 意外な「教育格差」から見えるイギリス文化

Sixth formが大学進学のための特別進学学年とはいえ、イギリスではこうした2年間の「高校生活」を経た学生すべてが大学に進学するわけではありません。


2018年8月、イギリスの大学入試機関(UCAS:Universities and Colleges Admissions Service)は、UK(グレート・ブリテン及び北アイルランド連合王国)全体で35万3,960人以上の学生が大学進学を決定していると発表しました。このうちイングランド(英国)単体では、18歳人口の27.9%が進学課程へ進めるとされましたが、これは記録的な数であったといいます。(出典:UCAS


一方、日本の大学・短大進学率は2018年度で、58万1,946人(57.9%)と、こちらも過去最高となっています。(出典:大学ジャーナル) 日本は少子化の影響で比較的多くの大学の門戸が開かれていることや、短期大学なども含めて幅広い進学の選択肢があることから、単純な国際比較はできませんが、イギリスの大学進学はまだまだ限られた学生のものであると捉えることもできます。


教育問題には様々な要因が複雑に絡んでいるため、どの国であろうと一口に語ることはできません。しかし、イギリスの教育環境を考えるとき、「階級制度」による教育機会の格差が少なからず影響を与えているといわれています。


前述のUCASの発表に、以下のような記述がありました。



A record 16.1% of people from the most disadvantaged backgrounds have been accepted, a rise of 0.4 percentage points on 2017.


2018年度は「最も恵まれない背景」を持つ学生も、2017年から0.4%増加となる16.1%の大学進学率を記録した。



この「最も恵まれない背景」とは、イギリスに今も残る3つの階級社会のうち労働者階級および貧困層を指しています。


現代日本に住む私たちから見るとピンとこないかもしれませんが、イギリスは上流階級(Upper Class)、中級階級(Middle Class)、労働階級(Working Class)に大別できる階級社会なのです。


この階級制度は歴史的な名残であり、差別的なものではないイギリス独特の一種の文化ともいえます。各々が出自に誇りを持っている一方で、各階級の間には社会的・金銭的な壁があることも事実です。


例えば、上流階級の学生は、オックスフォードやケンブリッジといった名門大学の入学権を一部確保されているなど、イギリスにおいて、家柄と教育は切っても切れない関係にあるのです。



オックスフォード大学



まとめ

このような「教育格差」が、先進国のイギリスに今でも残っていることに驚かれた方も多いのではないでしょうか。


しかしながら、UCASのレポートにもあるようにイギリスでも少しずつですが、多くの子どもたちに教育機会が与えられるような動きが広がり始めています。


2019年7月、イギリスの与党・保守党党首選に勝利し首相となったボリス・ジョンソン氏も、教育をはじめとする社会政策への投資拡大を明言しました。


政治や文化といった社会背景は常に教育問題に大きな影響を与えるものですが、教育の質を高めることは、社会の発展につながります。イギリスの教育制度の今後の変化には大きな期待が寄せられます。


日本でも、2021年の「大学入学共通テスト」移行に伴って、教育制度が大きな変化を迎えます。若い世代にもより多くの教育機会がいきわたるよう、そして幅広い学びの選択を得られるよう、子どもたちの教育を家庭の内外両面から支えることができるといいですね。



2019/8/30

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